デューデリジェンスブログ「鈴木正人弁護士 グローバルコンプライアンスへの備え」

グローバルコンプライアンスへの備え④企業における外国公務員贈賄防止体制(外国公務員贈賄防止指針(2))

2017/05/10

1. はじめに

前回ブログでは、経済産業省が策定している外国公務員贈賄防止指針(以下「本指針」という。)を踏まえて企業における外国公務員贈賄防止体制について概説したが、本ブログでは、本指針を踏まえた企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方について説明する。

2. 企業が目標とすべき外国公務員贈賄防止体制の在り方

本指針は、国際商取引を行う各企業が目標とすべき防止体制の在り方を例示している。当該の例示は法令上の義務を示すものではないとされており、また、具体的な在り方は企業の規模・事業形態等によって具体的内容は大きく異なりうるものであるが、各企業の体制構築に当たり参考となるため以下紹介する。

(1) 防止体制の基本的内容

本指針は、外国公務員贈賄防止体制として、一般的に以下の6項目が防止体制として望ましい要素であると述べている。その概要は下図のとおりである。

<外国公務員贈賄防止体制として望ましい要素>

    望ましい要素

以下、個別の項目の留意点を説明する。

(2)  基本方針の策定・公表の留意点

まず、①基本方針の策定・公表については、外国公務員贈賄防止を支える企業倫理とともに社内で共有化され、徹底が図られることが重要である。周知方法については基本方針の内容を重ねて発出して浸透を図ることや国内外の外国人従業員への周知のみならず、外国政府や、外国投資家、商取引相手の理解を求める等の場面でも活用できるよう、必要に応じ翻訳しておくとの工夫も有用である。

(3)  社内規程の策定

次に、②社内規程の策定については、特に、リスクベース・アプローチに基づき、高リスクの行為については、承認要件、決裁手続、記録方法等に関するルールを制定することが望ましい。高リスクの行為としては、外国公務員等との会食や視察のための旅費負担といった外国公務員等に対する利益の供与と解される可能性がある行為や前回ブログ2(2)記載の図表「贈賄リスクが高いもの」のうちの行為類型に列挙された行為が考えられる。ルール化の内容であるが、行為類型毎に承認要件、承認手続、記録、事後検証手続を内容とする社内規程を策定することや契約前の確認手続・契約期間中等の手続を定めるとの対応が考えられる。また、人事上の制裁に関しては、就業規則や決裁規程、稟議規程など関連社内規程が存在する場合には、外国公務員等への支払行為や外国公務員等との取引についても適用されることが明らかとなるよう、贈賄行為を対象として明記することが考えられる。

(4)  組織体制の整備

さらに、③組織体制の整備については、社内の役割分担、関係者の権限及び責任が明確となるよう、企業規模等に応じた内部統制に関する組織体制を整備することが重要である。その際には、コンプライアンス担当役員又は社内でコンプライアンス担当を統括するコンプライアンス統括責任者の指名、社内相談窓口及び通報窓口の設置等などの事項が重要である。さらに、防止体制の運用においては、現場における具体的な贈賄の兆候を早期の対応に結びつけることができるよう、現場担当者が上司やコンプライアンス責任者に気軽に相談できるような、組織内の「風通し」を確保することや子会社を含め、営業部門・営業担当者に対しては、実現困難な受注実績を求めるなど贈賄行為を行う動機を形成させないよう配慮することにも留意すべきである。

次回のブログでは、本指針を踏まえた「企業が目標とすべき防止体制の在り方」のうち④社内における教育活動の実施、⑤監査、⑥経営者等による見直しの項目の留意点等について説明する。

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弁護士 鈴木 正人

弁護士 鈴木 正人
岩田合同法律事務所パートナー。2000年東京大学法学部卒業。2002年弁護士登録。2010年ニューヨーク州弁護士登録。2010年4月から2011年12月まで金融庁・証券取引等監視委員会事務局証券検査課に在籍。『FTACA対応の実務』(共著、中央経済社、2012年)、『Q&Aインターネットバンキング』(共編著 金融財政事情研究会、2014年)、『The Anti-Bribery and Anti-Corruption Review Fourth Edition』(共著 Law Review、2016年)等著作多数。

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